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My Integration日本学 教員インタビュー

学際的かつ国際的な
見地から分析を行い、

固有の問題領域を
形成する法理学。

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大学院法学研究科・法学部 教授

樺島 博志 KABASHIMA Hiroshi

人文社会科学の諸分野を参照する法理学は、日本学国際研究で一定の役割を担える。
人文社会科学の諸分野を参照する法理学は、日本学国際研究で一定の役割を担える。

主に、法の一般理論、正義論、法律学方法論の3つの分野からなる法理学を専門に研究を行っています。現在関心を持っているのは、法の一般理論に属する問題として、公害訴訟や災害訴訟などの現代型訴訟の諸問題が挙げられます。また、正義論の分野では、精神史の見地から、とりわけ20世紀から現在にかけて、正義観念がどのように歴史を形作っているのか、さらに、法律学方法論の問題群のなかでは、ドイツで高度に発達している法的審査技術が、日本の法体系にどのように応用可能であるのか、という点について検討を進めているところです。

法理学は、法律学に属しながら、政治学、歴史学、経済学、哲学、文学など人文社会科学のさまざまな分野を参照しながら、固有の問題領域を形成しています。すなわち、法理学は、人間の意味世界を対象とすることから、さまざまな文化的、社会経済的背景からなる相異なる観念間の比較を行います。したがって、法理学は、法という社会的媒介を研究対象としながら、学際的かつ国際的な見地から分析を行う点において、日本学国際研究のなかで一定の役割を担うことができると思います。

精神活動の産物を歴史動態の動因と考える精神史的歴史認識方法での考察。
精神活動の産物を歴史動態の動因と考える精神史的歴史認識方法での考察。

法理学研究の方法のうち、ここでは、正義論の考察方法としての精神史という歴史認識方法が、関連性を有すると思います。精神史とは、人々の精神活動の産物である観念が、歴史動態の動因となっている、という見方です。すなわち、たとえば政治学的歴史認識が、政治的アクターによる権力闘争の過程として歴史動態を捉え、また、社会史的歴史認識が、大衆の日常生活における社会関係の変化として歴史動態を捉えるのに対し、精神史的歴史認識は、とりわけ知識人の精神活動からうまれるアイディアが現実世界に変化をもたらす動因となって歴史動態が生ずるものと捉える点に特徴があります。

法理学を専門とする研究者は海外にも多く、なかでも、正義論の分野を中心に、ブラジリア大学のG.ブレア教授、台北大学の劉幸義教授、レイ・ファン・カルロス大学のA.デ・プラダ・ガルシア教授、ミュンヘン工科大学のCh.リュトゥゲ教授らとの間で共同研究に取り組んでいます。

グローバル化した人間社会の将来に向けた第三の道の具体像を。
グローバル化した人間社会の将来に向けた第三の道の具体像を。

日本学国際共同大学院においては、今日のポスト・モダンと呼ばれる知的状況のなかで、資本主義と共産主義という2つの近代主義を克服し、グローバル化した人間社会の将来に向けた第三の道の具体像を、国内外の大学院生や若手研究者とともに考えてみたいと思います。

仏教、儒教、道教の伝統は、東アジア文明圏の共通の遺産であり、近代化を経た今日なお、日本人の精神世界のなかには、東洋・中国文明の要素が色濃く残っていると思います。そのいっぽうで、日本社会は、社会生活の細部にいたるまで高度に効率化されており、この点において、人間疎外、社会的搾取、貧富の格差といった近代社会の負の側面を、先進諸外国と共有していると思います。現代日本社会のこのような状況は、ポスト・モダンの条件を解明し、第三の道を構想するために、すぐれた知的環境を形作っているのではないかと思います。

国内外の若手研究者とともに、法の原理的な解明に取り組みたい。

日本学国際共同大学院に属する研究者の一人として、法理学分野では、とりわけ正義論の観点から、日本の近代史における精神活動としての日本浪曼派、京都学派の哲学が、近代主義の陥穽の克服という精神史的普遍的課題を掲げながらも、日本的権威主義・軍国主義の隘路になぜ陥ってしまったのか、という問題を中心に取り組んでみたいと考えています。

私の研究室では、正義論の分野において、20世紀の現象学、京都学派の哲学、ポスト・モダン、第三の道に属するさまざまな議論を研究しています。また、ケース・スタディーについては、近代日本法のなかで生じた現代型訴訟と呼ばれる一連の課題群、具体的には、公害・薬害・環境問題、戦後補償問題と平和、民主制と言論の自由、性別・人種・少数者の平等、知的財産とフェア・ユース、国際的資本集中と金融取引、などの問題に属する裁判例を研究しています。法の原理的な解明に取り組もうとする、国内外の若手研究者との出会いを楽しみにしています。

Profile
  • 東北大学大学院法学研究科教授。1993年、京都大学大学院法学研究科修士課程修了(法学修士)、
    2000年、アウクスブルク大学第一哲学部博士課程修了(哲学博士)、人間環境大学人間環境学部助教授、
    佐世保工業高等専門学校一般科目助教授、東北大学大学院法学研究科助教授を経て、2007年より現職。
  • 主な研究分野:法理学
  • 大学院法学研究科・法学部 教員紹介