伝統的な知の技法を生かし、 普遍的なフォーマット化を図る。
日本学国際共同大学院の設立にあたり、その構想段階から関わってきた一人として、はじめに、本大学院に対し私個人が掲げた3つの目標について述べたいと思います。
一つめは、テキストの読み方や扱い方など、日本の人文学に受け継がれてきた伝統的な知の技法を大事にすることです。資料をきっちりと読むという伝統において、東北大学は日本を代表する大学です。その技法を大切に受け継ぎながら、「日本学」に関して、東北大学をわが国最高レベルのものにまで高めていかなければならない、そう考えました。
二つめが、自分たちの研究の成果を、特定の地域を超えてより多くの研究者と共有できる形にフォーマット化していくという目標です。私が関心を持っている問題の一つに「神」がありますが、これは日本人だけでなく、世界中の人にとってももっとも根源的な関心事であると思います。
神道は日本にしかない宗教ですが、これを海外の方々に伝えようとするとき、日本語で書かれた文献や論文をただ翻訳して示すというやり方ではまったく通用しません。というのも、いまの日本の神や神道についての語り方が、日本人にしか理解できないフォーマットになっているからです。フォーマットそのものを、だれでも理解でき議論できるものに変え、それを国外に発信していくという作業が、今後とても重要になると思います。
そして三つめが、日本学もまた、私たちが直面している人類的な課題にきちんと対応できる学問でなければならないということです。いまの人文学は学問分野が個別分散化しているから総合しなければならない、とはよく言われることです。ただし、そのためには多くの人々が専門分野を超えて興味を持つような、切実で具体的な課題を定立することが不可欠です。誰もが関心を持たざるをえないような差し迫った現代的な問題を掲げれば、そこから分野を超えた議論が生まれ、それが学問の総合という遠大な目標への第一歩となるはずです。